中小企業の知財活用事例

 

狭いユーザー層を特許取得により幅広く展開し事業規模を広げる

企業概要

明治35年創業。資本金4500万円。従業員数64名。
葉タバコの乾燥機で培った温湿度管理技術を武器に、現在では食品乾燥機や葉タバコ乾燥機などの各種乾燥機を製造販売している。

知財活用のきっかけ

昭和3年葉タバコ乾燥機の製造を始めたが、当時、たばこは専売制であったため競争が生まれにくい業界の体質があったため、葉タバコ乾燥の技術も特許取得により独占しようという意識は薄かった。
そのため知財保護が不十分のまま新規事業を開始。しかし同業他社メーカーの模倣戦略により新市場の利益は圧迫。また既存市場についても特許権を取得したものの、権利範囲の取り方が悪く、模倣を防止できなかった経験を持つ。

知財活用の取り組み

平成29年、事業計画に「知財戦略の立案」および「職務発明規定の整備」を盛り込み、社長自らが知財重視の方針を示し、社内の知財意識を高めるようになる。
食品専用乾燥機9種は、特許権だけでなく、デザインやネーミングの保護、意匠権による保護も積極的に取り入れ、食品専用乾燥機というニッチな分野で、一つの製品に対して多角的に権利化を図り、競争が起きにくい市場作りを実現。売上ゼロから今では全国47都道府県はもとより、海外にまでユーザーを広げている。

成果

同社の独自技術である「温湿度管理技術」は素晴らしい技術ではあったものの、葉タバコ乾燥機というユーザーが狭い層に限られており技術の認知度が低かった。
そこで自社製品に取得済産業財産権を明示して営業ツールとしても活用
業界の注目度の高い表彰制度に応募してその受賞実績をPRして、技術力の高さを積極的にアピール。
また行政と協力しながら地元産品の果物をドライフルーツとして乾物化して地域ブランド商品にしていく取組を行い、同社が特許を取得している食品乾燥技術の提供や、商品の販売戦略などのアドバイスを行うことで、 地元の農産加工品の商品化やブランド化を後押ししている。

 

大手や海外企業と対等に活動するために戦略的に特許を活用

企業概要

資本金1000万円以下。従業員数7名。
塗材、液体、粉粒体、溶融体を薄膜で 積層コーティングする技術を提供しており、薄膜積層コーティング装置を世界のLEDメーカーに納入している。

知財活用のきっかけ

自社のビジネスを守るため(競合他社の模倣防止や参入防止等)に知財を活用している。
設立当初は製造プロセス改善のコンサルティング等を中心としていたが、徐々に独自の技術を活用し、自ら製品開発を始めるようになった。中小企業が大手企業や海外企業と対等に活動するためには、知的財産権の保有が不可欠と考え、自社の事業戦略に沿って戦略的に特許出願を行っている。

知財活用の取り組み

主に薄膜積層塗布工法・装置に関し開発を行い、これらに関して国内外で特許権を取得。特許出願時はまだ顧客の潜在的なニーズを考慮しつつ、自社の特許網構築が見込まれる市場をターゲットとして特許出願している。基本特許に加えて周辺特許を出願して他社の参入や模倣品を防止。特許権や商標権による知財ミックスで製品を知的財産権で多面的に保護している。
特許両党の減免制度の等の中小企業支援のための制度を活用し、最小コストで取得すべく取り組んでいる。

成果

ノウハウ以外にたくさんの方法と装置の特許権及び商標を所有しているので、自社工場がなくとも国内外の委託先で自社ブランドの装置を製造することができる。取引先の信頼をより高めるための有効な手段として知財権を活用している。 現在、主力製品である薄膜積層コーティング装置に関する特許権は、国内及びアメリカ、アジアの 各国で取得しており、同社では特許権を取得していることで製品の売上に寄与していると考えている。
 

知財の専門家と連携しながら知的財産でノウハウを保護

企業概要

資本金4000万円。従業員数21名。
創業時は産業機器の研究開発が目的。現在は主に携帯電話用アンテナ等の技術を応用した伸縮性ワイヤー等の医療機器製品や、表面処理技術・ワイヤー撚線加工技術を用いた産業機器製品を開発・製造。

知財活用のきっかけ

研究開発は社長自らが取り組んでおり、製品開発の達成感はあったがそれらのアイデアやノウハウを保護するという意識が薄かった。
「御社にしか発注しない」という言葉に知財の契約を交わさずに納品を続け、製品の不具合対応でノウハウを大手企業に開示。共同開発していた大手企業は独自でアンテナ開発を進めており海外の自社工場で生産する体制となりオーダーが取り消しになったという苦い経験がある。
これをきっかけに知的財産権で技術を守る意識と営業秘密の管理にも気を付けるようになった。

知財活用の取り組み「知財の専門家に研究開発段階から相談」

市や国が行っている各種の補助事業制度を知り、利用している。また経済産業局が行った研修の題材に同社が取り上げられ、その際知財戦略について実務的な観点から専門家のアドバイスを受ける機会があり、知財専門家の重要性を認識した。
その後は企業との話し合いの場にも研究開発の段階から弁理士に同席してもらうようにし、事業化の相談や契約等でも知財の取り扱いに間違いがないか知財専門家に相談しながら対策を行っている。

成果

現在、同社の主要製品である医療機器関連用のケーブルやワイヤーは、携帯電話用アンテナの開発で培った技術を応用しており、伸縮性があり形状記憶で型崩れしないネックレスの紐、歯列矯正用のワイヤー、人工腱など、ニッチな分野を狙った事業展開を行っている。製品開発をする際には、弁理士が作成した特許マップを参考にしながら事業戦略を立てている。 最近は海外企業と繋がりが増え、同社の製品が部品として使われた製品が海外で出荷されており、弁理士と相談しながら海外でも特許・意匠出願をし、模倣品対策を行っている。

ロイヤリティ収入を大手海外企業から確保

企業概要

資本金7000万円。従業員数122名。
創業以来「測る」ことにこだわり続け、血圧計などの医療機器の製造販売、監視カメラ用光学機器部品の製造販売を行っている。同社製品は国内だけでなく世界の国々で利用されている。

知財活用のきっかけ

同社では、知的財産権を会社の経営資源であり経営ツールという意識。
特許権を活用して法的な独占権を持った商品を市場へ展開して、自社製品の市場の確保を図るようにし、また商標権や意匠権を活用して自社ブランド・デザインの保護を図っており、模倣品に対しては、知的財産権を行使して自社製品の保護を図るようにしており、これが会社経営における指針となっている。

知財活用の取り組み

手首式血圧計の課題であった測定精度の向上のため、血圧を正確に測る技術を開発して特許を取得するとともに、同技術を搭載した血圧計の製品化に成功し、世界でも権威のある「ドイツ高血圧連盟」のクオリティマークを取得している。国内のみならず、海外にも広く製品を販売していくため、米、独、仏、伊などの海外で特許を取得している。 また、欧州の大手医療機器メーカーから、同社が保有する特許技術の供与の要請があり、特許のライセンス契 約を締結し、ロイヤリティ収入を得ている。
また、発明を奨励するため、職務発明規定を設け、発明委員会等を設置して知的財産の権利化を 支援している。また、出願をする際は、公的機関の補助金制度を積極的に活用している。

成果

同社の主力商品である血圧計は、先発メーカーとして技術開発して国内外で特許網を構築して市場の優位性をいち早く確保したことで、製品のシェア獲得と利益の拡大に貢献している。
また、同社はメディカル市場の強化と海外市場の参入を目指すため、海外の企業と特許ライセンス契約を締結して自社製品の市場拡大を図りつつ、海外で流通している模倣品を排除するために知的財産権を行使している。

社員数5名のベンチャー企業がロイヤリティ収入を大手海外企業から確保

企業概要

資本金7000万円。従業員数5名。
独自開発したユニークなカラーコードの自動認識技術のライセンス許諾、及び当該技術を用いたサービス、コンテンツ等を提供している。

知財活用のきっかけ

創業者は前職で米国に10年間駐在した経験から、ビジネスにおける知的財産権の重要性を十分認識しており、ベンチャー企業は、数件の特許で戦う必要があることから、他社が避けて通れないようなシンプルで強い特許を取得しておくことが大切であることを強く意識していた。

知財活用の取り組み

従業員5名ということもあり、特許出願の明細書案は全て創業者自身が作成して、特許事務所に相談して対応している。社内で新しい技術のアイデアが出てきた場合は、まずは創業者自身が調査を行い、特許権を取得できそうな場合は、マーケティングを行う前に出願を行い、 他社に当該技術を先に出願されないように注意している。
海外への出願も積極的に行っており、今後の事業展開や模倣品対策のために、米国及び欧州のほか、ロシア・中国・韓国でも特許権を取得していて、米国・韓国への出願の際には、特許審査ハイウェイ(PPH)を活用して早期に特許権を取得した。

成果

同社に置いて、既存市場への新規参入は簡単ではなく、創業からの2年間は苦労の連続であった。しかし、創業から3年目に、国内企業とのライセンス契約を結んだ頃から、認知度が向上して、徐々に業績が上向いいった。その後、様々な業界の企業とのライセンス契約を通じて、関連の技術が普及し、2015年には、国内大手監視カメラメーカーとのライセンス契約を締結、世界初となる入退室システムを提供している。今後は、グローバルに事業展開を行う企業とも連携しながら、海外での認知度をさらに高め、世界に技術を普及していきたいと考えている。

社内外での知財活用の実践と、各種支援策の活用

企業概要

資本金4160万円。従業員数77名。
大正14年創業。電気の安全に貢献することをミッションとして検電器や地絡継電器などを開発・製造してきた国内シェアナンバー1のリーディングカンパニー。

知財活用のきっかけ

創業当初、漏電対策が問題となっていたため、米国企業からの技術導入を図りながら、事業を展開していた。その後、自社製品の自主開発と共に特許出願にも取り組み始める。
また、同社は意匠権の取得も意識して行っている。きっかけは、検電器でコモディティ化が進み、価格競争に悩まされていた際、外部デザイナーによる斬新なデザインを採用したところ、売れ行きが好調となったことだった。この経験から、BtoBビジネスにおいても工業デザインが差別化・付加価値化に有効であると認識。意匠権を取得するようにしている。

知財活用の取り組み

特許出願についての判断は、社長以下役員クラスで構成する役員連絡会(2週間に1回の頻度で実施)で徹底的に議論をして決定している。また、営業秘密管理規定でノウハウの情報管理し、発明創出活動にも、社内規定の改定を行い発明創出へのインセンティブを高めるための報奨制度の充実化及び、社内の知財意識向上を目的とした知財担当者や経営層による知財取得支援の取組(知財に関する社内研修・相談・アドバイス)を実施している。
なお、社内の知財活動の取組に際しては、専門家派遣のほか、外国出願補助金制度、特許料等減免制度、早期審査制度などの知財支援策を活用している。

成果

常に適正な地絡検出値を保ち続ける同社の継電器技術は、特許権を取得して市場を独占したことで、電力業界において広く普及しており、直流電圧検出技術で取得した特許は、太陽光等再生可能エネルギーの直流分野で活用されるとともに新たな特許取得に繋がっている。
また、海外市場は電力に関する規格が異なることもあり、知的財産権についても十分な対策を実施してこなかったがアジア圏を中心に模倣品が出回りはじめたことから、海外における自社ブランドの確立を目指して、商標を欧州、中国、韓国、台湾、米国、ベトナム、マレーシアで取得。インドネシア、イラン、シンガポール、タイにも出願している。特許や意匠も海外へ出願・取得しており、自社製品のブランド力の維持向上やシェア拡大に向けて取り組んでいる。

特許取得で賠償金の回避に対抗

企業概要

資本金4000万円。従業員数125名。1976年創業。
工場の自動化に貢献する「高精度工業用センサ」の専門メーカー。工作機械業界においては、延べ世界17ヶ国・70 社以上の工作機械メーカーに採用され、世界トップクラスのシェアを誇る。

知財活用のきっかけ

創業当時、大手自動車メーカーと共同で測定器の精密スイッチを開発。大手自動車メーカーとの共同出願によって最初の特許を取得し製品の販売を開始したが、同社の経営を支えるまでには至らず、経営は苦しい状況にあった。そのような中、1983年に「CNC旋盤用ツールセッタ」の製品化に成功。数多くの工作機械メーカーが採用し大ヒット製品となった。
しかし、翌年、フルコピー品が工作機械見本市で大手企業から製品化されていることを知る。同社は特許を取得していなかったため、大手企業のコピー製品に対抗できなかった。先代社長は大手企業の創業者あてに自社製品の模倣を止めるよう直談判したところ、同社は機械式のツールセッタの販売から撤退した。
同社ではこのことがきっかけで、特許権取得の重要性を認識することとなった。

知財活用の取り組み

業界全体のニーズを探りながら開発を行い、知的財産権を取得することで自社の技術や製品を他の企業が模倣することを牽制し、大手企業とも勝負していく戦略を取っている。
知的財産権は、重要性の高いものについて特許を取得しており、形状等も意匠権を取得して、ひとつの製品を知的財産権で多面的に保護している。また、最近は各ユーザーとも守秘義務契約を結ぶようにしており、特許権とノウハウ(生産技術)を組み合わせて自社製品の防衛対策をしている。
海外への出願時はその後に権利侵害等の訴訟になる可能性等を考慮して、弁護士へ手続を依頼するようにしている。現在、国内だけでなく米国、ヨーロッパ、中国等の海外で特許を取得している。

成果

同社は、過去に海外の企業から突然特許権侵害の警告を受けたことがある。この時は弁護士と相談をし、「警告を受けた製品は、自社が特許を取得した技術に基づく製品であり、相手方の特許権は侵害していない」ことを主張。自社の特許を用いて、相手方が要求してきた多額の賠償金の支払請求を回避している。
同社の製品は国内外で特許を取得するとともに、自動車、工作機械、半導体、ロボット、医療機器、スマートフォン製造など、様々な分野で使用され、経営規模も年々拡大している。