実用新案の利点と活用方法:アイデアを素早く保護する手段として
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簡単な技術的工夫については特許ではなく、実用新案登録というもので保護を受けることができる、と聞きました。実用新案登録はどのように利用すればよいのでしょうか?
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簡単な技術的工夫は特許で保護される対象になるだけでなく、実用新案登録でも保護される対象になります。実用新案登録で取得する実用新案権も特許権と同じく独占排他権です。登録を受けた実用新案権に係る考案を実用新案権者だけが独占排他的に実施でき、第三者の実施行為に対して差止請求、損害賠償請求などを行うことができます。ただし、現状の実用新案登録には特許権と相違している点が多くあります。
実用新案で保護されるのは特許より簡単な技術的工夫?
実用新案で保護される考案は「自然法則を利用した技術的思想の創作」です。一方、特許で保護される発明は「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」です。
これに対応して、出願前に知られていた技術・知識に基づいて、権利の成立を目指す発明・考案が、簡単・容易に発明・考案できたものではないことが要求される進歩性では、実用新案の場合、出願前に知られていた技術・知識に基づいて、「きわめて容易に考案をすることができた」ものでないことが要求されるのに対して、特許の場合「容易に発明をすることができた」ものでないことが要求されることになっています。ただし、米国などでは、従来から、「技術的思想の創作」を特許制度だけで保護しています。
また、20世紀の後半には、「日本のように技術の進んだ国で『技術的思想の創作』という同一のものを保護するときに、進歩性判断に要求されるレベルを相違させているのはいかがなものか」という意見が寄せられ、進歩性判断に要求されるレベルは、現状では、特許、実用新案で実質的に相違していないと考えられています。
実用新案では一部の技術的工夫についてしか保護を受けることができない
特許に比較して実用新案では一部の技術的工夫についてしか保護を受けることができません。これは、実用新案では「物品の形状、構造又は組み合わせに係る考案」のみが保護されることになっているからです。このため、方法、物を製造する方法、形状・構造が特定されない組成物・化学物質などや、コンピュータプログラムなどは実用新案では保護されません。これらについての保護を求める場合には特許出願を行うことになります。
無審査登録が実用新案の特徴
実用新案の場合、出願を行いますと、特許庁は形式的な審査のみを行い、新規性、進歩性といった実体的な登録要件に関しては審査を行うことなく、出願後4カ月程度で、実用新案登録番号の付与、実用新案登録証の発行、実用新案登録公報の発行を行い、実用新案権が付与されます。このような無審査登録が実用新案の特徴です。
実用新案で保護を受ける場合の注意点
実用新案法では、実用新案権者が警告書送付などといった権利行使する場合、あらかじめ特許庁に料金納付して作成請求し、考案の新規性、進歩性などに関して鑑定的な評価を特許庁審査官から受けた実用新案技術評価書を提示することが必要であるとされています。実用新案技術評価書が提示されない権利行使は有効ではなく、また、この提示やその他相当の注意をしないで警告や権利行使を行った後に、実用新案登録が無効になった場合には、警告や権利行使をしたことにより相手方に与えた損害を賠償する責めを実用新案権者が負うという無過失賠償責任が規定されています(実用新案法第29条の3)。特許権の権利行使ではこのような無過失賠償責任はありません。このため、現状では、実用新案登録出願の数は非常に少なくなっています。特許庁によると、2019年度の特許出願件数が30万7千件に対して、実用新案登録出願の件数は5千件にすぎません。
実用新案登録後の特許出願
出願後の早期に登録を受けることができて早期に独占排他権が発生するにもかかわらず、権利行使に多くの制限が課せられていることから実用新案登録出願は現状ではあまり利用されていません。特許庁はこのような状態を改善し、実用新案制度の魅力を向上させる目的で種々の改正を行っており、その一つが、実用新案登録された後も、出願日から3年以内であれば、実用新案登録に基づいて特許出願を行い、審査請求して特許庁の審査を受けて特許権成立を目指すことができる、というものです。
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