外国での特許や商標登録に関する手続きについては、基本的に外国の現地代理人に依頼することになります。その際、現地代理人への委任状が必要とされる国があり、さらに、委任状に対して公証やアポスティーユなどの証明が必要とされる国もあります。この記事では、外国の現地代理人に対する委任状の準備と認証プロセスについて紹介します。

現地代理人への委任状とは?

現地代理人への委任状(Power of Attorney: POA)とは、外国における特許や商標登録などの手続きを現地代理人(現地の弁護士や弁理士など)に任せることを証明するための書面です。委任状の提出については、国や手続き内容によって必要でない場合があります。

委任状の種類としては、「個別委任状」と「包括委任状」があります。個別委任状は、個々の案件に限定して手続きを任せるための通常の委任状です。これに対して、包括委任状は、案件を特定せずに包括的に手続きを任せるための委任状です。包括委任状を作成しておけば、案件ごとに委任状を用意する手間を省くことができます。なお、包括委任状の使用が認められていない国(インドネシアやマレーシアなど)もあります。

委任状の種類手続きの対象メリットデメリット
個別委任状
(Power of Attorney: POA)
個々の案件・悪用された場合、個々の案件にリスクを限定できる。・案件ごとに委任状を作成するため手間がかかる。
包括委任状
(General Power of Attorney: General POA)
既存の案件および今後の案件も全て・案件ごとに委任状を作成する必要がないため手間が省ける。・悪用された場合、多くの案件がリスクに晒される。
・インドネシアやマレーシアなど一部の国では使用できない。

現地代理人に対する委任状の作成

現地代理人に対する委任状の作成にあたっては、通常、現地代理人から提供される委任状の電子データ(WordやPDFなど)を利用します。

委任状の必要事項は、次のとおりです。

  • 委任者(出願人や権利者)の情報:氏名(名称)、住所(居所)
  • 受任者(現地代理人)の情報:氏名(名称)、住所(居所)
  • 委任する内容:具体的な手続き内容や権限範囲
  • 委任の年月日
  • 委任者の署名:日本語の署名でもOK

これらの記載事項のうち「委任者の署名」については、電子データを印刷した紙の委任状に、委任者である本人または代表者がペンを使って署名します。この委任者によって署名された紙の委任状が「委任状の原本」となります。

委任状の証明手続き

証明手続きの種類

一部の国では、委任状への署名だけではなく、その委任状が署名者によって作成されたこと(真正性)を証明するための証明手続きが必要になる場合があります。委任状の証明手続きには、「公証」に加え「領事認証」または「アポスティーユ」が必要となる場合があります。これら3つの証明手続きの概要は、次のとおりです。

証明方法対象書類手続機関内容主な対象国
公証
(Notarization)
私文書
(現地代理人に対する委任状)
公証役場私文書である委任状が真正であることを公証人が公に証明します。これによって、委任状は、公文書になります。・アラブ首長国連邦(2022.9.21~)
・カンボジア
・タイ
・ラオス
領事認証
(Legalization)
公文書
(認証を受けた委任状)
外務省→
駐日大使館・領事館
公証を受けた委任状の公印が真正であることを外務省が証明します(公印確認)。その後、公印確認された委任状を駐日大使館・領事館が認証します。これによって、委任状が真正であることが外国においても証明されたことになります。
アポスティーユ
(Apostille)
公文書
(認証を受けた委任状)
(ハーグ条約の締約国向け)
外務省または
一部の公証役場(ワンストップサービス)
外務省からアポスティーユ(付箋)による証明を取得することによって、駐日大使館・領事館の領事認証を受けた委任状として、ハーグ条約の締約国で使用することができます。・アルゼンチン
・サウジアラビア(2022.12.7~)
・メキシコ(訴訟関連のみ)
・中国(訴訟関連のみ、2023.11.7~)

公証の取得方法

現地代理人の委任状について公証を受ける場合、公証役場に支払う公証手数料は9,500円です。公証手続きを代理人に依頼する場合には、別途代行費用がかかります。

公証の流れとしては、予め公証役場に予約した上で、必要書類を公証役場に持参し、その場で委任状に公証を受けます。

公証の必要書類については、署名者が個人なのか法人の代表者なのか、公証役場に行くのは署名者本人なのか代理人なのか、によって異なります。

署名者公証役場に行く者必要書類
個人署名者本人①現地代理人に対する委任状の原本
②次の1~5のいずれか
 1.「 印鑑証明書(発行3カ月以内)」+「実印」
 2. 「運転免許証」
 3. 「マイナンバーカード」
 4. 「住民基本台帳カード(写真付き)」
 5. 「パスポート」,「身体障碍者手帳」or「在留カード」
法人の代表者署名者本人①現地代理人に対する委任状の原本
②次の1~2のいずれか
 1. 「代表者の資格証明書(発行3カ月以内)」+「代表者印」+「印鑑証明書(発行3カ月以内)」
 2. 「法人の登記簿謄本(発行3カ月以内)」+「代表者印」+「印鑑証明書(発行3カ月以内)」
個人代理人
(日本の弁理士)
①現地代理人に対する委任状の原本
②署名者本人から代理人への委任状(実印を押印)
③署名者本人の印鑑証明書
④代理人の確認資料(次の1~5のいずれか)
 1.「 印鑑証明書(発行3カ月以内)」+「実印」
 2. 「運転免許証」
 3. 「マイナンバーカード」
 4. 「住民基本台帳カード(写真付き)」
 5. 「パスポート」,「身体障碍者手帳」or「在留カード」
法人の代表者代理人
(日本の弁理士)
①現地代理人に対する委任状の原本
②「代表者の資格証明(発行3カ月以内)」or「法人の登記簿謄本(発行3カ月以内)」
③法人代表者から代理人への委任状(代表者印を押印)
④代表者印の印鑑証明書(発行3カ月以内)
⑤代理人の確認資料(次の1~5のいずれか)
 1.「 印鑑証明書(発行3カ月以内)+「実印」
 2. 「運転免許証」」
 3. 「マイナンバーカード」
 4. 「住民基本台帳カード(写真付き)」
 5. 「パスポート」,「身体障碍者手帳」or「在留カード」

領事認証の取得方法

領事認証を受けるためには、公証人役場で公証を取得した後、外務省の公印確認が必要です。従来、公印確認を受けるためには、公証人役場で公証の手続きを行った後、外務省で公印確認の手続きを行う必要がありました。現在では、東京都、神奈川県、静岡県、愛知県、大阪府の各都府県にある公証人役場であれば、ワンストップサービスを利用することができ、公証人役場で公証だけでなく公印確認も一緒に受けることができます。

そして外務省で公認確認を取得した後、対象となる国の駐日大使館や領事館に領事認証を申請します。領事認証の申請方法については、各国の駐日大使館や領事館にお問い合わせください。

なお、アポスティーユが有効な国(ハーグ条約の締約国)の場合には、領事認証を取得するのではなく、手間とコストを省くことができるアポスティーユの取得をおすすめします。

アポスティーユの取得方法

従来、アポスティーユを受けるためには、公証人役場で公証の手続きを行った後、外務省でアポスティーユの手続きを行う必要がありました。現在では、東京都、神奈川県、静岡県、愛知県、大阪府の各都府県にある公証人役場であれば、ワンストップサービスを利用することができ、公証人役場で公証だけでなくアポスティーユも一緒に受けることができます。

現地代理人に対する委任状の提出方法

委任状の提出方法は、国や手続きの種類によって異なり、「委任状の原本」を提出する必要がある場合のほか、「委任状の写し」である書面や電子データを提出すればよい場合もあります。また、日本をはじめとする一部の国では、特許庁に登録された代理人が特許や商標の出願手続きを行う場合には委任状の提出が要求されません。

出願時の委任状
(原本:◎、写し:〇、不要:×)
備考
日本×
中国訴訟関連の委任状には領事認証(アポスティーユ可)が必要
台湾
韓国
インド特許庁より原本提出要求があった場合に15日以内に提出しなければならない。
米国
カナダ×
欧州特許×
欧州連合商標×
ドイツ×
フランス×
オーストラリア×
ニュージーランド×
シンガポール×
インドネシア包括委任状は不可
マレーシア包括委任状は不可
タイ◎(公証)
ベトナム
カンボジア◎(公証)
ラオス◎(公証)
アラブ首長国連邦◎(公証)
サウジアラビア◎(領事認証(アポスティーユ可))
アルゼンチン◎(領事認証(アポスティーユ可))
メキシコ訴訟関連の委任状には領事認証(アポスティーユ可)が必要

最後に

この記事では、外国の現地代理人に対する委任状の準備と認証プロセスについて解説しました。各国ごとに手続き内容も異なり、公証やアポスティーユの手続きは少し手間もかかりますが、関心のある国の手続きだけでも一通り把握しておきましょう。もし何か疑問があれば、専門家にご相談ください。

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