特許権侵害訴訟における損害賠償額算定方法が2020年改正特許法で見直し
2020年4月1日から施行された改正特許法により、特許権侵害訴訟における損害賠償額算定方法が見直されました。これまでは特許権侵害訴訟においては、民法第709条の不法行為による損害賠償の規定に基づいて損害賠償請求が行われてきましたが、特許権侵害の損害の立証が困難であるという問題が存在していました。
そこで、改正特許法の特許法第102条では、以下の3つの方法に基づいて損害額を推定することができるようになりました。
- 侵害行為がなければ特許権者が販売することができた逸失利益を損害額と推定する(同条第1項)。
- 侵害者の利益の額を損害額と推定する(同条第2項)。
- 相当実施料額を損害額として請求する(同条第3項)。
特許権者の逸失利益の覆滅部分についても相当実施料額の請求が可能に
従来、特許権者が立証すれば、侵害行為がなければ特許権者が販売することができた逸失利益が損害賠償額として推定されていました。しかし、侵害者は特許権者の逸失利益を覆滅するために、「特許権者の実施能力」や「特許権者が販売することができない事情」を反証することができました。これにより、覆滅された部分については相当実施料額の請求が認められるかどうかについて、裁判例や学説で議論されてきました。
しかし、2020年4月1日の改正特許法では、特許権者の逸失利益の覆滅部分についても相当実施料額の請求が認められるようになりました。つまり、侵害者が「特許権者の実施能力」がないことや「特許権者が販売することができない事情」を立証した場合でも、特許権者は覆滅が立証された部分について相当実施料額を損害額として請求することができるようになりました。
相当実施料額の算定方法の改正
また、相当実施料額の算定方法についても改正が行われました。これまでは、過去の実施許諾例や業界相場など一般的な考慮要素や特許の有効性、交渉の経緯など事後的な要素が考慮されてきました。しかし、2020年4月1日の改正法では、裁判所が特許権の侵害があったことを前提として、特許権者と侵害者が合意した場合に得られたであろう相当実施料額を考慮することができると規定されました。
これにより、通常の交渉時における相当実施料額よりも増額される場合があり、特許権者にとってはより公正な損害賠償を受ける可能性が高まりました。また、改正法によって覆滅された部分についても相当実施料額の適用が可能となりました。
さいごに
改正特許法の施行により、特許権侵害訴訟における損害賠償額の算定方法が見直され、特許権者がより適切な損害賠償を請求しやすくなりました。特に特許権者の逸失利益の覆滅部分についても相当実施料額の請求が認められるようになり、損害賠償の範囲が広がりました。
これにより、特許権者はより公正な損害賠償を受けることができるようになりました。改正特許法の改正によって、特許権者と侵害者の間でより公平な解決が促進されることが期待されます。
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