特許無効審判とは?手続きや効果について分かりやすく解説
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特許庁のJ-Plat Patでライバルメーカーの会社名を特許出願人の検索キーワードにして検索したところ現存している特許権を発見しました。この発明は、当業界では従来から知られていた技術で特許が成立しているのが間違いではないかと思います。当社ではこの技術を採用した製品を市場に出したいと考えています。この特許にどのように対応すればよいでしょうか?
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新製品が特許権を侵害するおそれが無いものになるように設計変更することが難しく、特許権者に交渉して実施許諾を受けることも難しいのであれば特許無効審判請求を特許庁に提出することが考えられます。
特許無効審判(特許法第123条)
特許無効審判は、そもそも、新規性が欠如している、進歩性が欠如している、等の理由で成立すべきでなかった特許に対して、特許は初めから成立すべきでなかったという特許庁の判断を求めて特許庁に提出できるものです。特許庁での審理の結果「特許は初めから成立すべきでなかったという」効果が発揮されるものとして特許異議申立(特許法第113条)があります。
特許異議申立は、特許庁が行った特許付与について、特許庁自身が見直しを行う契機を広く社会に求めるものです。一方、特許無効審判は、特許権者から「特許権侵害である」として追及を受けるおそれのある者などと、特許権者との間、すなわち当事者間における具体的な紛争の解決を主たる目的にしています。このため、両制度の間には以下のような相違があります。
特許異議申立制度と無効審判制度との比較
特許異議申立 | 特許無効審判 | |
制度趣旨 | 特許の早期安定化を図る | 特許の有効性に関する当事者間の紛争解決を図る |
手続 | 特許庁と特許権者との間で進められる査定系手続 原則として書面審理 | 請求人と被請求人(特許権者)との間で進められる当事者系手続 原則として、特許庁の審判廷に出廷して、口頭審理 |
特許異議申立人・無効審判請求人になれる者 | 何人も異議申立可能 ただし、匿名での申立は不可 | 利害関係人のみが無効審判を請求できる(利害関係人:特許発明と同種の製品を製造する者、実際に特許権侵害で訴えられている者、類似の特許を有する者、等)。 |
申立て・請求の時期 | 特許掲載公報発行の日から6月以内に限って申立可能 | 設定登録後いつでも無効審判請求可能(権利の消滅後でも無効審判請求可能) |
異議申立の理由、無効審判請求の理由 | 公益的理由(新規性・進歩性欠如、明細書の記載不備、等) | 公益的理由(新規性・進歩性欠如、明細書の記載不備、等)、 権利帰属に関する理由(冒認出願、共同出願違反)、 特許後の後発的理由(外国人の権利享有規定に対する後発的な違反、後発的な条約違反) |
特許庁での審理の結論 | 特許維持決定あるいは、 特許取消決定 | 棄却審決(無効審判請求を棄却する)あるいは、 無効審決(無効審判請求を認める) |
不服申立 | 特許維持決定に対しては不服申立不可(異議申立人は同一の証拠、同一の理由で特許無効審判請求が可能)、 特許取消決定に対して特許権者は知財高裁に決定取消訴訟の提起可能(被告は特許庁長官) | 棄却審決に対しては無効審判請求人、無効審決に対しては特許権者がそれぞれ知財高裁に審決取消訴訟の提起可能(前者の場合は特許権者が被告、後者の場合は無効審判請求人が被告) |
特許庁での審理の結論が確定したときの 効果 | 特許維持決定:特許権は維持される 特許取消決定:特許権は最初から成立しなかったものとして取り扱われる | 棄却審決:特許権は維持される。棄却審決確定を受けた無効審判請求人は同一の無効理由で再度の特許無効審判を請求できない(一事不再理効) 無効審決:特許権は最初から成立しなかったものとして取り扱われる。後発的無効理由の場合は後発的無効理由に該当した時から消滅 |
特許無効審判の動向
特許庁が公表しているデータによれば、毎年18~19万件程度の特許権が成立し、特許掲載公報発行後の6カ月間に限って提出が認められている特許異議申立の件数は年間1000件を超えています。特許無効審判は特許成立後何年経過してからでも請求可能なことを考えますと特許無効審判請求件数は決して多くありません。
さいごに
いたずらに紛争を発生させるのは望ましくありませんから、他社の特許権を発見した場合、特許権侵害にならないように技術的に回避する道を探る、技術的に回避できないならば実施許諾を申し込む、等の対応を採るのが望ましいとされています。
特許権者から特許権侵害訴訟の提起を受けた際に、その侵害訴訟における対抗策の一つとして裁判所において「無効の抗弁」を行い、その一方で、特許庁において特許無効審判を請求するというのが一般的です。なお、「無効の抗弁」とは、特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから、原告である特許権者は、被告に対して権利行使することができない(特許法第104条の3)と主張する抗弁です。
特許無効審判請求は、このように、特許権者との間における具体的な紛争の場面で活用されることが多いものですので慎重な対応が必要で専門家である弁理士によく相談されるようお勧めします。
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