特許年金とは?特許申請者にとって重要な支払い制度の解説

特許権を無事に取得できましたが、特許成立後、毎年のように特許庁に特許料を納付しなければ特許権を維持できないという説明を受けました。
これはどのようなものなのでしょうか?

特許権は成立すればそれで終わりではなく、特許成立後の特許権を維持するための「特許料」を毎年のように特許庁へ納付する必要があります。
このような「特許料」は、特許発明を日本国内において独占排他的に実施できる特許権を維持するための「特許維持費用」や「権利料」と言えるかもしれません。

特許維持年金

 特許出願についての特許庁での審査の結果「この出願については、拒絶の理由を発見しないから、特許査定をします。」という審査官の最終判断である「特許査定」を受けたときには、その受領の日から30日以内に1~3年分の特許料を登録料として特許庁に納付することで特許権が成立します。

 特許査定後に1~3年分の特許料を納付しない場合には、特許出願が却下されて消滅します。

 特許権成立後は、特許権を維持する費用として「特許料」を毎年のように特許庁へ納付することになります。

 特許業界では、毎年のように納付を行うことから特許料のことを「特許維持年金」または、単に「年金」と呼んでいます。

 特許権設定登録の際に1~3年分の特許料を納付していますので、4年目の特許料は、特許権設定登録の日(=特許成立日)から3年が経過する日(=納付期限)までに特許庁へ納付することになります。

 例えば、2020年11月4日に特許権が成立した場合、1~3年分の特許料を納付していますので、特許権は2023年11月4日まで有効に存続します。

 翌年度の第4年次に相当する2023年11月5日から2024年11月4日の期間にも特許権を有効に存続させたい場合には、翌年度の特許料(特許維持年金)の納付期限、すなわち、3年次が満了する2023年11月4日までに、第4年次の特許料を特許庁へ納付しなければなりません。

 第4年次の特許料を納付期限までに納付しない場合、特許権は特許料納付済の第3年次が満了する2003年11月4日をもって消滅します。

 このように、翌年度の特許料(特許維持年金)を特許権成立日に対応する日である納付期限までに納付しない場合、特許権は特許料納付済の年限が満了する時点で消滅する仕組みです。

2004年(平成16年)4月1日以降に審査請求を行った特許出願に成立する特許権については、特許庁へ納付する特許料は次のようになっています。

各年の区分金額
第1年から第3年まで毎年4,300円+(請求項の数×300円)
第4年から第6年まで毎年10,300円+(請求項の数×800円)
第7年から第9年まで毎年24,800円+(請求項の数×1,900円)
第10年から第25年まで毎年59,400円+(請求項の数×4,600円)
※第21年から第25年については、農薬、医薬品等の発明で権利存続期間の延長登録出願があった場合のみ

 特許維持年金と称されるように、第4年次以降の特許権を維持するための特許料は、一年ごとに「翌年度も特許権を維持し続ける必要があるか否か」を検討し、必要があれば、毎年、納付期限までに翌年度の特許料を納付することになります。

 上記の表の通り9年次までは3年ごとに特許料が値上がりします。

 特許料は、1年ごとでなく、複数年分(例えば、3年ごとに3年分)をまとめて納付することも可能です。

 また、実務では、権利存続期間満了日までの特許料をまとめて一括で納付しておくこともあります。例えば、他社に実施許諾したことから特許権を維持し続ける必要が生じた場合などにこのような一括納付が行われることがあります。

 特許権が成立して9年が経過する時点から納付する第10年次以降の特許料は第9年次までに比較して高額になります。特許権は特許権者のみが特許発明を独占排他的に実施できる独占権です。「特許成立後10年経過してまだ独占し続けたいということならばそれなりの金額の権利料(特許料)を支払ってください」という趣旨なのかもしれません。

特許権は出願日から20年で消滅する

 翌年度の特許権を維持・存続させるために毎年のように特許料を特許庁へ納付した場合でも「特許権の存続期間は、特許出願の日から20年をもって終了する。」(特許法第67条第1項)ことになっています。

 なお、農薬、医薬品等の発明で権利存続期間の延長登録出願を行って延長が認められた場合には、延長が認められた期間、最大で出願日から25年が経過するまで特許権の権利存続期間が延長されることがあります。

 特許権は出願日から20年で消滅することから、例えば、2015年5月7に特許出願して2020年11月4日に成立した特許権の場合、納付期限である2034年11月4日までに翌年分の第15年次特許料を特許庁に納付しても、特許権は、2035年11月4日まで存続するのではなく、2035年5月7日をもって「権利存続期間満了」により消滅します。そのため、この例では、第15年次に関しては半年程度の権利存続期間に対して一年分に相当する第15年次特許料を納付することになります。

特許維持年金納付期限の管理は特許権者が行う

 特許権を維持するための毎年の特許料(特許維持年金)納付に関しては、納付期限を経過しても経過後6ヶ月間の追納期間であれば、上述した表に記載した通常料金の二倍の額を納付することで特許権を維持、存続させることができます。

 上述したように、翌年度の特許料(特許維持年金)を特許権成立日に対応する日である納付期限までに納付しない場合、特許権は特許料納付済の年限が満了する時点で消滅しますが、正確には、追納期間を経過するのを待って「特許維持年金未納により特許権消滅」という特許庁内での処分が行われることになります。

 また、特許維持年金の納付期限前に特許庁から権利者に対して事前連絡が行われることはありません。そのため、特許権者が、納付期限を管理して自分の責任で特許維持年金を特許庁に納付する必要があります。

 一般的には、特許権者になる特許出願人が、特許出願から特許権設定登録までの手続を行った代理人(弁理士)との間で、所定の契約を結ぶ等して特許維持年金納付の管理サービスを受けることが行われています。

 なお、特許庁は、特許料等の納付時期の徒過による権利失効の防止を目的として以下のような種々の取り組みを行っています。

特許維持年金納付期限事前通知サービス 

 次期の特許維持年金納付期限が到来する前に注意喚起を受けるサービスで、アカウント登録を行った者が希望する特許番号に対して、特許料等の次期納付期限日をメールで通知受けるものです。なお、特許権維持のためには、通知を受けた後、別途に、納付期限までに特許維持年金納付手続を行わなければ特許権は維持できません。

設定登録料金の包括納付制度

 特許出願を特定することなく「包括納付申出書」を特許庁に提出することで、申出人の予納台帳または指定銀行口座から特許料等が特許庁に徴収され、設定の登録が自動的に行われるものです。この制度を利用することで、特許出願人は納付期限を心配することなく、また納付手続の簡素化が実現されるとされています。

特許料の自動納付制度

 特許権設定登録後の特許維持年金の納付を対象として「自動納付申出書」を特許庁に提出することにより、申出人の予納台帳または指定銀行口座から特許料等が特許庁に徴収され、特許庁に備えられている特許原簿に一年ごとに自動登録が行われるサービスです。特許権者は納付期限を心配することなく、また、手間を省いて権利を安全に維持・存続させていくことが可能になるとされています。

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