特許出願の発明者を訂正できますか?

 特許出願の際に願書(特許願)に記載して特許庁へ届け出ていた発明者を訂正したいのですが可能ですか?

弁理士
林 崇朗

 特許出願が特許庁に係属している場合であれば、特許出願の際に願書(特許願)に記載した発明者を補正することが可能です。

出願が特許庁に係属している場合に限り補正可能

 特許出願の際に願書(特許願)に記載して特許庁へ届け出ていた発明者は、この者が発明を完成させたという事実行為を表明しているものですから、
特許出願を行った後に補正・訂正を行う必要は生じないということが原則です。

 そこで、従来から、特許出願後の発明者の補正は簡単には行うことができないものとされていますが、
特許出願が特許庁に係属している場合に限って補正をすることが許されています。

 なお、特許出願が特許庁に継続している場合に限って発明者の補正が認められるので、特許権が成立した後に発明者を訂正することはできません。

発明者を補正する際に必要な手続

 特許庁 方式審査便覧 126.70では、以下に説明するような発明者の補正を行う場合に応じて、
それぞれ、以下に説明する手続補正書を特許庁に提出することで発明者の補正を行うことができるとしています。

<発明者自体を変更する補正>

 発明者自体を変更する補正としては、例えば、
「発明者 鈴木 一郎」と願書(特許願)に記載していたものを「発明者 佐藤 次郎」に補正する発明者の変更や、
発明者として一人しか記載していなかった場合に発明者を複数人に補正する発明者の追加、
発明者として複数人を記載していた場合に発明者を一人に補正する等の発明者の削除を行う場合、が例示されています。

 いずれの場合でも、発明者の補正を特許庁に届け出る「手続補正書」を特許庁に提出することで補正を行うことができます。

 「手続補正書」には【その他】の欄を設け、発明者を誤記した原因(例えば、特許出願人の会社担当者が、特許出願を、出願代理人である弁理士に依頼した際に、発明者の氏名を間違って伝えた、等)に言及して、変更(追加、削除)を行う理由を具体的かつ十分に記載する必要があります。

 発明者を誤記した原因としては、例えば、特許出願人の会社担当者が、出願代理人である弁理士に特許出願を依頼した際に、発明者の氏名を間違って伝えてしまった等が考えられます。

 また、発明者相互の「宣誓書」を上述した「手続補正書」に対する「手続補足書」に添付して書面で特許庁へ提出する必要があります。

 この発明者相互の宣誓書は、変更前の願書の発明者の欄に記載のある者と補正後の同欄に記載される者の全員分の真の発明者である旨又はない旨を宣誓したものであり、
変更前の願書(特許願)の発明者の欄に記載されている者(××××)と、補正後の発明者の欄に記載される者(△△△△と□□□□)の全員分の住所又は居所と氏名とが記載されていて、
発明者の相互関係(△△△△と□□□□とが真の発明者であり、××××は発明者ではない旨)が宣誓されているものになります。

<発明者の表示の誤記を訂正する補正>

 例えば、「発明者 佐藤 次朗」と願書(特許願)に記載すべきところを、「発明者 佐藤 次郎」と誤記していた場合にこの誤記を訂正する補正です。

 発明者の補正を特許庁に届け出る「手続補正書」を特許庁に提出することで補正を行うことができます。

 この際、「手続補正書」に【その他】の欄を設け、発明者を誤記した原因(例えば、特許出願の代理人である弁理士が、願書(特許願)に発明者の氏名を記入した際、漢字が誤変換されていることに気づかず、そのまま特許出願を行ってしまった、等)に言及して、誤記の理由を具体的かつ十分に記載する必要があります。

<発明者の記載順序を変更する補正>

 例えば、複数人の発明者を「鈴木 一郎」、「佐藤 次郎」の順で願書(特許願)に記載すべきところを、
一番目に「 佐藤 次郎 」、二番目に「 鈴木 一郎 」と願書(特許願)に記載していた場合に、発明者の記載順序を訂正する補正です。

 発明者の補正を特許庁に届け出る「手続補正書」を特許庁に提出することで補正を行うことができます。

 この際、「手続補正書」には、補正後の発明者の欄に正しい順番で発明者を記載し、【その他】の欄を設けて「発明者の順序の変更(発明者の記載内容に変更なし)。」と記載します。

特許出願前に願書(特許願)の記載を確認する

 以上に説明したように、特許出願後であっても、特許出願が特許庁に係属している限り発明者の補正を行うことが可能です。

 しかし、特許出願は、特許出願で特許請求する発明について特許を受ける権利(特許法第33条)を所有している者のみが行うことのできるものです。

 特許出願を行った特許出願人が特許出願に係る発明について特許を受ける権利を所有していないときには特許出願を拒絶する理由になり、
特許権成立後にこれが判明した場合には特許無効の理由になります。

 一方、特許を受ける権利は発明をすることにより生じるもので、原則としては、発明完成時に、当該発明についての特許を受ける権利を、発明者が原始的に取得することになります。

 このため、願書(特許願)に記載している発明者の表示に間違いがあって、特許出願後に補正を行う必要が生じる場合、
「特許出願人は、特許出願前に、発明者から、適式に特許を受ける権利の譲渡を受けていたのか?」疑義が生じることがあり得ます。

そこで、特許出願を行う代理人弁理士と十分な連絡を取り合って、特許出願前に願書(特許願)の記載を十分に確認しておくことが望ましいです。

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投稿者プロフィール

HAYASHI Takaaki
HAYASHI Takaaki弁理士
特許や商標などの知的財産の専門家。特に半導体・自動車・遊技機の技術分野において実務経験が豊富。諸外国の知財実務にも精通しており、特にインドネシアに関しては知財以外のビジネス情報にも詳しい。