
新型コロナの感染症対策を契機として「テレワーク」(在宅ワーク)を導入する企業が増えています。 一方で、企業が保有する秘密情報の漏えいリスクには十分注意する必要があります。そこで、不正競争防止法上の「秘密情報の保護」の観点から、企業の秘密情報を適切に守りながら、テレワークを実施していく上で留意すべきポイントについて取り上げます。
営業秘密とは
営業秘密には、顧客名簿、販売マニュアル、仕入先リスト、財務データなどの営業上の情報のほか、製造技術、設計図、実験データ、研究レポート、図面などの技術上の情報が含まれます。不正競争防止法において「営業秘密」とは、「秘密として管理されている生産方法、販売方法、その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」と定義されています。
具体的には、①秘密管理性、②有用性、③非公知性という3要件が全て満たされていることが必要です。たとえ社内で秘密情報とされている情報であっても、この3要件が満たされていなければ不正競争防止法においては
秘密情報として保護されないことになります。
①秘密管理性(秘密として管理されていること)
秘密管理性要件が満たされるためには、営業秘密保有企業が当該情報を秘密であると単に主観的に認識しているだけでは不十分。営業秘密保有企業の秘密管理意思(特定の情報を秘密として管理しようとする意思)が、
具体的状況に応じた経済合理的な秘密管理措置(例えば、「秘密としての表示」や「秘密保持契約等の契約上の措置」等)によって、従業員に明確に示され、結果として、従業員が当該秘密管理意思を容易に認識できる必要、換言すれば、認識可能性が確保される必要があります。
②有用性
その情報が客観的にみて事業活動にとって有用であること。公序良俗に反する内容の情報(脱税や有害物質の垂れ流し等の反社会的な情報など)、秘密として法律上保護されることに正当な利益が乏しい情報を営業秘密の範囲から除外した上で、広い意味で商業的価値が認められる情報を保護する趣旨で、秘密管理性、非公知性を満たす情報は、通常、有用性が認められます。
現に事業活動に使用・利用されていることを要しません。また、直接ビジネスに活用されている情報に限らず、間接的な(潜在的な)価値がある場合も含まれます。例えば、過去に失敗した研究データ等のいわゆるネガティブ・インフォメーションにも有用性は認められることがあります。
③非公知性
「公然と知られていない」とは、一般的に知られた状態になっていない、又は容易に知ることができない状態にあることをいいます。具体的には、合理的な努力の範囲内で入手可能な刊行物に記載されていない状態にあることや、公開情報や一般に入手可能な商品等から容易に推測・分析されないなど、保有者の管理下以外では一般的に入手できない状態にあることとされています。
実務上の注意点
①情報に触れる(アクセスできる)権利のある者を指定。
重要な情報ほど、その情報にアクセスできる人数を制限する。業務上やむを得ない場合は、許可制による持ち出し制限とします。この場合、しっかりとした取扱いルール(回収・廃棄等)を決めておきましょう。
②触れてはいけない情報について、その情報が秘密であるとわかるようにする。
「社外秘」「マル秘」などの表示や分離管理などで明確に秘密であることを注意喚起しましょう。
③技術的にその情報に触れる(アクセスする)ことを制限する。
ID・パスワード管理、複製禁止、個人USB等の接続禁止など、各種の技術的な管理を徹底しましょう。
おわりに
万一、営業秘密が漏えいした場合には、経営に甚大な影響を与えかねません。テレワーク実施にあたり、重要な情報の保護については、今一度、管理状況が適切かを確認されてはいかがでしょうか。
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