特許を受ける権利とは?発明者の保護と独占権の意味を解説
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特許出願を他の会社と一緒に行いたいのですが、可能ですか?
一緒に出願することにした場合、注意しておくべきことはありますか?
また、特許出願を行った後に特許出願人の名義を変更することは可能ですか? -
特許出願を他社と共同で行うことは可能ですし、特許出願後に特許出願人の名義を変更することも可能です。
特許を受ける権利
発明が完成すると、その完成した発明について特許権の付与を求めて特許庁に出願し審査を受けます。新規性、進歩性などの条件を満たしている発明であることが特許庁の審査で認められると1~3年分の特許料を納付することで特許権が成立します。
このように発明の完成から特許権成立までは時間を要します。特許法では、発明が完成してから特許権が成立するまでの間における発明者などの利益状態を保護する目的で「特許を受ける権利」というものを認めています。
「特許受ける権利」は発明者が発明を完成させることで発生します。「特許受ける権利」は国家に対して特許権の付与を請求できる権利ですから公権であるとともに請求権であり、かつ、財産権の一種であると考えられています。財産権の一種ですから、その全部、あるいは一部を譲渡、等によって移転することが可能です。
特許出願人になれる者
特許出願を行うためには法律上の権利義務の主体となる資格(=権利能力)が必要です。一般的にいう「人」(=自然人)と、法律上の「人」としての地位を認められた団体(=法人)は権利能力を備えており、特許出願人になることができます。
しかし、特許取得を希望する発明についての「特許を受ける権利」を有していなければ特許出願人になることができません。特許出願人がその発明についての「特許を受ける権利」を有していない場合、特許出願の審査の段階では拒絶理由となって特許が認められません。また、特許権成立後であれば、特許無効の理由となって特許無効審判の請求によって特許権が取り消されます。これはいわゆる「冒認出願」と呼ばれるもので、他人の発明をスパイ行為などによって盗んで特許出願を行っても特許は認められません。
「特許を受ける権利」を取得する形態
発明者は発明完成によってその発明についての「特許を受ける権利」を取得します。そこで、発明者が特許出願人になって特許出願を行うことができます。例えば、個人事業主である事業主個人が発明を完成させ、特許出願人となって個人で特許権取得し、会社に実施許諾するケースなどがあります。
特許出願人になる者が発明者から「特許を受ける権利」を取得する最も一般的な形態は会社の従業員などが行った発明の「特許を受ける権利」を会社が取得して会社が特許出願人となるものです。この「職務発明」のケースについては後述します。
特許出願後は「特許を受ける権利」を譲渡したことを証明する「譲渡証書」を譲渡人が捺印して作成し、この捺印済「譲渡証書」を譲受人が特許庁へ提出して特許出願人の名義を変更できます。なお、特許法では「特許を受ける権利」を譲り受ける者である譲受人を「承継人」と表現します。
「特許を受ける権利」は目に見えません。このため、発明者との間でトラブル等が発生するなどで発明者が「特許を受ける権利」を二重譲渡することが起こり得ます。この点も考慮して、特許出願前における「特許を受ける権利」の承継はその承継人が特許出願をしなければ第三者に対抗できないことになっています(特許法第34条)。会社外の発明者から「特許を受ける権利」を取得して特許出願を行う等の場合、二重譲渡が生じないように注意を払う、遅滞なく特許出願を行う、等の対応に注意を払うことが望ましいと考えられます。
職務発明制度
特許法では「特許を受ける権利」は発明者が発明を完成することで発生し、発明者が発明完成時点で「特許を受ける権利」を取得することにしています。しかし、会社の従業員が完成した、会社の業務範囲に属し、なおかつ、発明を完成させた従業員の職務上の発明である「職務発明」に関して、従業員への給与、設備、研究費の提供等、使用者による貢献がなされています。
そこで、特許法では、従業員と使用者との間の衡平に考慮して、使用者に「職務発明」についての無償の通常実施権(特許発明を実施できる権利)を付与するとともに(特許法第35条第1項)、あらかじめ使用者が従業員との間で「職務発明についての特許を受ける権利」を承継すること等を取り決めておくことを認めています(同条第2項反対解釈)。なお、職務発明を行った従業員は、当該職務発明について使用者に「特許を受ける権利」を取得させたとき、あるいは、特許権を承継させたとき、使用者から「相当の利益」を受ける権利を有することになっています(同条第4項)。
会社内に職務発明規定を設け、使用者が「特許を受ける権利」を取得することを従業員との間であらかじめ取り決め、「従業員が職務発明を完成させた時からその特許を受ける権利は使用者に帰属する(いわゆる原始使用者等帰属)」ように取り決める、あるいは、そのような取決めがないときに、「その特許を受ける権利は従業員に帰属(いわゆる原始従業者等帰属)し、あらかじめ従業員との間で取り決めていたところによって使用者が特許を受ける権利を承継できる」ようにすることが可能です。なお、「従業員が職務発明を完成させた時からその特許を受ける権利は使用者に帰属する(いわゆる原始使用者等帰属)」と取り扱えるようになったのは平成27年度の特許法改正からです。
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