毎日の仕事からの発明発掘:特許申請の可能性を探る
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毎日のように製造を行い、毎日のように工夫を重ねています。
このような毎日の仕事、作業の中から発明を発掘することはできるのでしょうか? -
なんらかの技術的な課題や問題点の存在を認識していて、それを解決する工夫を行った場合、何を発明したのかを認識、意識することは簡単です。
しかし、毎日の工夫の積み重ねの中で、気づかないうちに発明を完成させていることがあります。
そのようなものを埋もれたままにしておくのと、発明として発掘して会社の知的財産として有効に活用していけるようになるのとでは、将来、大きな違いになります。ここでは、発明発掘の一般的な手法について説明します。
課題が明らかである場合
解決手段の提案
毎日の製造工程や開発工程で、何らかの技術的な問題点・課題を認識できている場合には、それを解決するための手段や工夫をたくさん書き出します。
解決するための手段や工夫を書き出す際には、細かいことは一切気にせずに、とにかくたくさん書き出してください。この段階では、実現できそうかどうか(実現可能性)、製造や開発にどのくらい費用や時間がかかりそうか(経済性)、同業他社がすでに採用していそうな工夫であるかどうか、特許になりそうかどうか、などは一切考える必要はありません。
解決手段の評価
次に、書き出した解決手段や工夫の一つひとつについて、その有効性を評価します。この段階で、評価が低くて次の作業に進まなかった提案については、取り上げていた問題点や課題に対する解決策の一つとして挙げられ、評価したことを記録に残しておきましょう。将来、何らかの技術的な問題点・課題が発生したときに解決策を検討する材料になることがあります。
次の段階の問題点・課題の把握
より高い評価を受けた解決手段を採用する場合、次にどのような問題点・課題が生じることになるかを検討します。技術開発は、いわば、無限ループです。技術は、螺旋状に積み重ねられて次第に発展していくものです。何らかの技術的な問題点・課題を解決・克服するために何らかの解決手段を採用すると、その解決手段を採用したことに起因して新たに解決すべき問題点・課題が浮上してくるのが一般的です。
新たな解決手段の提案
上述した新たに浮上してきた問題点・課題を解決する解決手段を、上述したように、実現可能性、経済性などを問題にせずにたくさん書き出します。
新たに提案された解決手段の評価
新たに提案を受けた多くの解決手段の一つひとつについて、その有効性などを評価します。このように、解決する必要がある何らかの技術的な問題点・課題が最初から認識できている場合には、
・多数の解決手段の提案⇒
・提案された解決手段の評価⇒
・高い評価を受けた解決手段を採用した場合に生じる新たな問題点・課題の把握⇒
・把握された新たな問題点・課題に対する多数の解決手段の提案
という工程を繰り返すことで発明を発掘することができます。
このようにして発掘された発明は、当初に認識されていた何らかの技術的な問題点や課題を解決できるという効果を発揮できるものです。
このような発明発掘作業を行う際に、専門家である弁理士に参加してもらうことができます。また、発掘した発明を採用して実施したときに他社が所有する特許権を侵害するおそれはないか、発掘した発明を特許出願する意義があるか、などについては、専門家である弁理士に相談できます。
技術者の暗黙知として既に発明が完成している場合
埋もれている発明の「見える化」
生産現場・開発現場などにいる技術者などが、日々の生産・開発活動などで行っている工夫の中にきらりと光る発明が存在しているが、技術者などは「あたりまえのこと」と考えていて、発明であると認識していないことがあります。このような場合、発明を「見える化」することが重要です。生産現場・開発現場などにいる技術者から聞き取りを行う、技術者の皆でディスカッションを行ってもらう等により、生産・開発工程にどのような工夫が加えられてきたのか、その経過を「見える化」します。
どのような工夫を行うことによっていかなる問題点、課題が解決されたのか、どのような効果が上がるようになったのかが皆に明らかになるようにするものです。生産・開発工程に様々な工夫がつぎ込まれていることがありますので、皆の記憶を一つ一つ掘り起こし、どのような工夫が採用されたのかを拾い出して、一人ひとりが採用したと考えている工夫についての認識を皆で共有できるようにします。採用した工夫によって発揮されるようになった効果について、様々な工夫がつぎ込まれている場合、採用した工夫とそれによって発揮されるようになった効果についての認識が技術者同士の間で異なることがあります。採用した工夫とそれによって発揮されるようになった効果との対応関係が皆の共通認識になるように「見える化」します。
この際、採用しようとしたがうまくいかなかった工夫(なぜうまくいかないと判断されたのか)、考えつくだけはしたのだが試してみなかった工夫(試してみなかった理由)なども、「見える化」して社内での共通認識にしておくと、将来、何らかの技術的な問題点・課題が発生したときに解決策を検討する材料になることがあります。
「見える化」した工夫の評価
上述したようにして「見える化」した工夫の中で、発明として特許出願できるもの、会社内の技術的なノウハウとして蓄積する方がよいものを選別します。
例えば、同業他社であってもいずれ考えつくことになるであろうと思われる工夫については、特許取得できるものならば、一日でも先に特許出願することが有利になります。
発明として特許出願できる可能性のあるものについては、技術的・経済的価値を高める上で更に改良・改善の余地はないのかを社内で検討できます。また、弁理士などの専門家に相談して、この工夫は他社が所有している特許権を侵害しているものではないか、特許出願する意義があるか等々や、発明内容をより普遍化し効力範囲の広い発明概念にすることについて更なる検討を行うことができます。
製造や開発現場で働いている人たちは毎日のことなので「当たり前のこと」と思っていることの中に発明や、発明の種が埋もれていることが多くあります。
そこで、社内に埋もれている発明を「見える化」する際の上述した聞き取りや、ディスカッションなどに新鮮な視点から発明を認識できる弁理士などの専門家に参加してもらうのも有効です。
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