日本製薬工業協会は、新型コロナワクチンの特許権の一時放棄に反対する声明を発表しました。
バイデン米政権がワクチンの特許権の一時放棄を支持したことを受けたもので、
製薬協の中山会長は、ワクチン生産には技術的な課題が多く、
「知財の放棄によって生産拡大や供給が可能になるわけではない」とコメントしました。
さらに原材料や容器などの資材が不足しており、
「原材料・資材の不足に拍車をかけ、これまで以上に供給網が分散・混乱し、
一層の供給遅延などが発生する可能性を憂慮する」としています。
ワクチンの特許権に関する議論はWTO(世界貿易機関)で行われていて、
南アフリカとインドがワクチンを自由に生産できるよう特許権の一時的な停止を提案し、
多くの途上国が支持しています。
これまで消極的な立場をとってきたアメリカは特許権の一時放棄を支持する姿勢を打ち出しました。
一方、ドイツやイギリスは、特許放棄だけでは高品質のワクチンは生産できず、
高度な生産技術の移転など、製薬企業の協力が不可欠だという意見が根強く、
特許権の一時停止には慎重な姿勢を続けています。
日本は明確な態度を示していません。
中国は、新型コロナウイルス対策を多国間で議論する「世界健康サミット」において、
特許権の一時放棄を支持する考えを表明しました。
途上国への供給も含めた「ワクチン外交」でも、米中が対抗する構図が浮かび上がりました。
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