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 国内鉄鋼最大手の日本製鉄は、電気自動車やハイブリッド車などのモーターに使われる「無方向性電磁鋼板」とよばれる鉄鋼製品について、自社の特許を侵害されたとして、トヨタ自動車と中国の鉄鋼大手の宝山鋼鉄に対し、それぞれおよそ200億円の損害賠償を求め、東京地方裁判所に提訴したと発表しました。

 日本製鉄によりますと、同社が保有する鋼材の特許を中国の宝山鋼鉄が侵害して製造し、それをトヨタが購入して車の製造と販売をしたとしています。日本製鉄は、トヨタに対しては問題の鋼材を使った電動車の製造と販売を差し止める仮処分を併せて申し立てました。

 一方、トヨタ側は、「材料メーカーとの取引にあたり、特許抵触がないことを書面で確認しており、電磁鋼板についても取引締結前に、他社の特許侵害がないことを製造元に確認のうえ、契約しています」とコメントしています。さらに、日本製鉄が特許侵害だと指摘しているのは鋼材の「成分」などで、ユーザーであるトヨタを訴えるのではなく宝山鋼鉄と日本製鉄の間で協議すべき問題だと主張しています。

 特許権の侵害で顧客の自動車メーカーを訴えるのは日本製鉄として初めて。取引関係が深い業界トップの企業同士が、訴訟にまで発展するのは異例の事態といえます。

 電磁鋼板は、モーターなどの回転機の「鉄心」(コイルの中にある鉄材:コア)などに使われている鉄鋼製品です。 無駄なエネルギーを使うことなくモーターの回転数を効率よく高めることができます。このうち「無方向性電磁鋼板」と呼ばれる製品は、特定の方向に偏った磁気特性を示さないように、鋼板の面内でできるだけランダムに結晶方位をコントロールした高付加価値鋼板で、電気自動車やハイブリッド車などのモーターなど回転機の鉄心に広く使われています。

 自動車メーカーが環境への配慮などから電動車の開発を加速させる中、日本製鉄は「無方向性電磁鋼板」が、脱炭素社会の実現に貢献するとともに、次世代の収益の柱となる鋼材と位置付けています。今回、「カーボンニュートラルの鍵となる重要な技術侵害を看過できない」として、提訴に踏み切ったとしています。

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