特許申請の共同出願とは?メリットと手続きのポイント
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特許出願を他の会社と一緒に行いたいのですが、可能ですか?
一緒に出願することにした場合、注意しておくべきことはありますか?
また、特許出願を行った後に特許出願人の名義を変更することは可能ですか? -
複数人が共同で特許出願を行う場合、いくつかの注意しておくべき事項があります。特許取得を目指す発明についての「特許を受ける権利」の全部を譲渡などによって移転する、あるいは「特許を受ける権利」の一部を譲渡などによって移転する等によって複数人で共同で特許出願を行ったり、特許出願後に特許出願人の名義を変更することが可能です。
複数人の共同で特許出願を行うときの注意
特許権成立を希望する発明についての「特許を受ける権利」はその全部又は一部を他人に移転することができます。
そして、複数人が共同して特許出願を行うことも可能です。例えば、従業員である発明者から「特許を受ける権利」の全部を譲り受けた勤務先の企業がその中の一部を提携先企業に譲り渡して共同で特許出願する、提携先企業と共同研究・共同開発を行って完成させた発明を共同で特許出願する、等です。
共同で特許出願を行って特許庁での審査で特許権が成立して共同特許権者になった場合、特許権の各共有者は、共有者の間で特段の取り決めを行っていない限り、他の共有者の同意を得ることなく発明の全部を実施できることが原則になっています(特許法第73条第2項)。これは特許成立する前の発明についても同様です。
自動車のような有体物を複数人で共同所有している場合、共同所有者の中の誰か一人が自動車を使用していれば他の共同所有者は自動車を使用できません。しかし、発明は、人間の頭の中で考え出した、形のない、無体物です。そこで、共有者の全員が発明の全部を実施できる(例えば、共有者のそれぞれが発明品を製造し、販売することができる)ことになっています。ただし、いくつか注意しておくべき点がありますので紹介します。
共有者全員で特許出願しなければならない
「特許を受ける権利」を複数人で共有している場合、各共有者は、他の共有者と共同でなければ、特許出願することができません(特許法第38条)。これに違反する場合には、特許を認めないとする拒絶の理由や、特許無効の理由となってしまいます。
共同出願人全員で行う手続
特許出願に対して不利益にならない行為については共同出願人の中の一人でも行うことができますが、特許法第16条に規定されている所定の行為については、共同出願人全員一緒でなければ手続できないことになっています。
例えば、
・特許出願を放棄する
・特許出願を取り下げる
・既に行った特許出願に基づいて1年以内に実施例を追加する等の
優先権主張出願を行う
・特許庁での審査で「特許を認めることができない」とする「拒絶
査定」を受けたのでこれに不服を申し立てる拒絶査定不服審判を請
求する
などの行為は共同出願人全員一緒でなければ手続できないことになっ
ています。
一方、特許法第16条に規定されていない行為、例えば、特許出願審査請求や、特許庁での審査で受けた「拒絶理由通知書」に対応する意見書・手続補正書の提出、等は、共同出願人の中の一部の者のみでも特許庁に対する手続を行うことが許されています。
他の共有者の同意が必要な場合
自分が所有している「特許を受ける権利」の持分を他人に譲渡する場合、事前に他の共有者の同意を得なければなりません(特許法第33条)。
例えば、A社とB社とで共同特許出願していたところ、A社が所有している特許出願に係る発明についての「特許を受ける権利」の一部をC社に譲渡して、A社、B社、C社の共同特許出願に変更する場合には、事前に、B社の同意を得る必要があります。
また、共同特許出願について、他人に仮専用実施権の設定、仮通常実施権の許諾を行う場合にも、事前に他の共有者の同意を得なければなりません(特許法第33条)。
例えば、A社とB社とで共同特許出願していたところ、A社がC社に対して仮通常実施権の許諾を行う場合、事前に、B社の同意を得る必要があります。
発明は人間が頭の中で考え出したもので目に見えません。そこで「特許を受ける権利」を有する者それぞれが発明の内容を完全に実施できますが、発明の実施はその実施に投下する資本と、関与する技術者如何によって著しく違った結果を生み出すことがあります。このため、共同出願人の各人が自由に持分移転したり、実施許諾すると、他の共有者の持分の価値が著しく異なったものになることがあります。このようなことが生じるのを防ぐべく、持分の譲渡や、仮専用実施権の設定、仮通常実施権の許諾には、他の共有者の同意が必要であるとしているものです。
共同出願にあたっての共同出願人の間での契約
上述したように、共同の特許出願の場合、注意しておくべき事項があり、また、一の共同出願人の行為が、他の共同出願人の不利益につながることもあります。そこで、共同出願にあたっては、共同出願人の間で契約を結んでおくことが望ましいです。ご不明な点は、専門家である弁理士にお問い合わせください。
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