特許庁は最近、「特許行政年次報告書2020」を公表しました。この報告書を通じて特許出願の推移を調査すると、2015年以降、特許出願件数は約31万件の範囲で推移していましたが、2019年には307,969件とやや減少傾向にありました。一方で、特許協力条約に基づく国際出願(PCT国際出願)の件数は、2014年を除き、着実に増加しており、2019年には51,652件(前年比6.2%増)に達しました。これは企業活動のグローバル化が進んでおり、国内だけでなく国外での知的財産戦略の重要性がますます高まっていることを反映しています。

中小の特許出願状況

 中小企業の特許出願状況についても注目してみましょう。2019年における中小企業の特許出願件数は39,596件(前年比4.8%増)であり、その内国人出願における中小企業の出願件数比率は16.1%となりました。全体の特許出願数に対して中小企業の割合は比較的少ないですが、多くの企業が特許に興味を持ち、積極的に出願していることがうかがえます。また、2019年の特許出願者数は11,574人(前年比2.3%増)であり、内国人出願における中小企業の出願者数比率は63.0%となりました。

中小の商標出願状況

 さて、商標出願における中小企業の状況も見てみましょう。2019年の中小企業による商標登録出願件数は94,532件(前年比6.0%増)であり、その内国人出願における中小企業の出願件数比率は63.5%となります。つまり、全体の商標登録出願の約60%以上が中小企業によるものでした。また、2019年の商標登録出願者数は32,303人(前年比4.1%増)であり、内国人出願における中小企業の出願者数比率は65.4%となりました。

まとめ

 以上の結果から、中小企業が特許および商標出願に積極的に取り組んでいることが明らかになりました。特許や商標の出願は、企業が自社の技術やブランドを保護し、競争力を強化するために重要な手段となっています。特に中小企業は、技術や知的財産を活用することで市場競争において優位性を確保し、成長を促すことができます。

 中小企業が特許や商標出願に積極的な理由の一つには、グローバル化が挙げられます。近年、企業の活動範囲が国内にとどまらず、海外にも広がっています。国外市場への進出や国際的なビジネス展開を行う際には、自社の技術やブランドを守るために国際的な特許や商標の保護が不可欠です。そのため、中小企業も国際出願に積極的に取り組み、グローバルな知的財産戦略を展開しているのです。

 また、特許や商標の出願は企業のイノベーションへの取り組みを示す重要な指標となります。特許出願数や商標登録数が増加することは、企業が新しい技術や商品を開発し、市場に導入していることを意味します。中小企業が積極的に特許や商標出願を行うことは、その企業の研究開発や創造性への取り組みが活発であることを示し、競争力の向上につながります。

 さらに、中小企業が特許や商標出願に意欲的な背景には、知的財産権の保護がもたらすビジネス上の利益もあります。特許や商標の保護によって、他社による技術やブランドの不正利用や模倣品の流通を防ぐことができます。これにより、企業は独自性を保ち、顧客に信頼と品質を提供することができます。また、特許や商標を持つことは、企業のブランド価値を高め、顧客の認知度や購買意欲を高める効果も期待できます。

 中小企業の特許や商標出願の積極的な取り組みは、経済全体にもポジティブな影響を与えます。特許や商標の取得によって、企業は競争力を向上させるだけでなく、技術や知識の共有や交流を促進する役割も果たします。他の企業や研究機関との連携やライセンス提供によって、イノベーションの促進や産業の発展が図られます。

 特許庁などの関連機関は、中小企業が特許や商標出願を行う際の支援策を積極的に提供しています。例えば、特許情報の提供や特許出願の手続きの簡素化、出願費用の軽減などが行われています。これにより、中小企業が特許や商標出願を行いやすくなり、知的財産活用の促進が図られています。

 中小企業は日本経済において重要な存在であり、特許や商標出願を通じて自社の技術やブランドを守り、成長を遂げることが求められています。特許出願や商標登録は、競争力の強化やイノベーションの推進、国内外でのビジネス展開に不可欠な手段となっています。中小企業が特許や商標出願に積極的に取り組むことは、経済の活性化や産業の発展に寄与するだけでなく、企業自身の成長と繁栄にもつながる重要な戦略と言えます。

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