特許申請の審査期間とは?理解して効果的な戦略を

特許を申請した発明について、特許庁での審査の結果を受け取るまでの期間はどれ程でしょうか?また、特許権の成立が認められるまでにはどれ程の期間が掛かるのでしょうか? 当社が希望するような時期に審査結果を受け取ることが可能でしょうか?

 2021年度の実績としては、「最初の審査結果までの期間」が平均10.1カ月、「特許の権利化までの期間」が平均15.2カ月となっています(出典:特許行政年次報告書2022年版)。

 また、中小企業であれば早期審査制度を利用して審査期間の短縮を図ることが可能です。早期審査を申請すれば「最初の審査結果までの期間」を平均3カ月以下へと大幅に短縮でき、「特許の権利化までの期間」についても半年程度に短縮することが可能です。

 日本の特許出願を基礎として外国出願する場合、その日本の特許出願の出願日(優先日)から1年以内の期限までに手続きを行う必要があります。その場合、日本の特許出願で早期審査を申請すれば、日本の審査結果を考慮して外国出願を行うかどうかを判断することも可能です。

特許出願の件数

 日本の特許庁への特許出願の件数は、2019年までは30万件を超える水準で推移していました。しかし、2020年の特許出願件数は288,472件、2021年は289,200件と2年連続で29万件を下回る結果となっています(出典:特許行政年次報告書2022年版)。また、中小企業の特許出願件数の推移を見てみると、2019年は39,597件(全体比16.1%)、2020年は39,789件(全体比17.5%)、2021年は37,875件(全体比16.1%)となっています(出典:特許行政年次報告書2022年版)。

 これらの特許出願件数を見てみると、2020年からのコロナ禍が特許出願件数にマイナスの影響を与えている可能性があります。コロナ明けの2023年以降には、特許出願件数の回復、特に中小企業による特許出願の増加が期待されます。

審査請求の件数

 特許庁に提出された特許出願は、その発明の特許性を判断する実体審査を経て特許になります。その実体審査を特許庁に請求する手続きが審査請求です。

 審査請求の件数は、2010年以降は24万件前後で推移しています。2021年の期間には238,557件の審査請求が行われました(出典:特許行政年次報告書2022年版)。

 審査請求の手続きは、特許出願と同時のタイミングで行うこともできますが、出願日から3年以内に行う必要があります。この審査請求期間に審査請求を行わなければ、その特許出願について特許を取得することができなくなります。この期間に審査請求を行わずに特許出願が消滅したとしても、後続の特許出願を排除できる先願の地位(特許法第39条)を確保することができます。さらに、出願後1年6カ月経過した時点において特許出願の内容が特許出願公報として特許情報プラットフォーム(J-Plat Pat)などを通じて世界中に公表されることから、後続の特許出願の特許性を否定する先行技術文献としての障壁を確保することができます。

 近年の審査請求の傾向を見ると、2016年から2018年の期間に日本特許庁に提出された特許出願に関する統計情報によれば、特許出願のうち約73%が審査請求され、残りの約27%の特許出願は審査されることなく消滅しています(出典:特許行政年次報告書2022年版)。

審査結果までの期間

 特許の実体審査は、基本的には審査請求が提出された順に審査が開始されます。そのため、審査請求を行ったからと言って、次の日から直ちに審査が開始されるわけではありません。審査請求が行われた特許出願は、先に審査請求が行われた特許出願の審査が終わるまでの間、実体審査の順番を待つことになります。

 審査請求から最初の審査結果である一次審査結果を受け取るまでの一次審査通知期間は、2017年および2018年には9.3カ月で推移していました。しかし、2019年には9.5カ月、2020年には10.2カ月と一次審査通知期間が延びています。そして、2021年の一次審査通知期間は10.1カ月となっています(出典:特許行政年次報告書2022年版)。特許庁で実体審査を受け持つ審査部門は、審査対象である発明の技術分野ごとに分かれています。そして、一次審査結果を受け取るまでの期間は、審査部門ごとに異なります。そのため、どの技術分野でも統計通りの期間で審査結果を受け取れるとは限りませんが、一次審査通知期間として審査請求後10か月程度が一応の目安となるでしょう。

 一回目の審査結果が「特許を認めることができない」という拒絶理由通知である場合には、60日以内に意見書や手続補正書を提出して反論し、審査官に再考を求めることができます。この手続により拒絶理由が解消すれば「特許を認める」という「特許査定」が下されることになります。一回目の審査結果が拒絶理由通知であって意見書や手続補正書を提出することによって拒絶理由が解消して特許が成立するのであれば、 早ければ審査請求から1年~1年半程度で特許を取得することができます。

 なお、特許庁では2014年からの10年目標として2023年度までに特許の「特許の審査結果までの期間」を平均10カ月以内、「特許の権利化までの期間」を平均14カ月以内とする目標を設定し、権利化までの期間の短縮に努めています。

 2016年から2018年までの統計結果によれば、特許出願のうち約73%が審査請求され、その内の約75%が特許査定となっています(出典:特許行政年次報告書2022年版)。そのため、特許庁に提出された特許出願の約55%が特許になっている計算になります。なお、特許になる割合は、あくまで統計上の数値であり、発明の技術分野によっても異なりますし、権利範囲を広く取るのか狭く取るのかの出願戦略によっても変わってきますので、注意が必要です。

早期審査

 特許庁は、中小企業の出願や実施関連出願、外国関連出願などの要件を満たす場合、出願人からの申請を受けて審査を通常に比べて早く行う早期審査制度を導入しています。早期審査を申請した出願の平均審査順番待ち期間は、早期審査の申請から平均3か月以下(2017年実績)となっており、通常の出願と比べて大幅に短縮されています。

 中小企業基本法等に定める「中小企業」である場合には早期審査を申請することができ、例えば、製造業の特許出願人が、従業員数300人以下あるいは、資本の額3億円以下のどちらかの条件を満たしていれば、「中小企業の出願である」として早期審査を申請することができます。

 特許出願後ただちに審査を受けて早期に特許を取得したい場合には、特許出願と同時に審査請求を行うとともに早期審査を申請することによって、出願後3カ月程度で審査結果を受け取ることが可能です。1回目に受け取った審査結果が特許査定であれば出願から4カ月程度で特許を取得することが可能です。また、1回目の審査結果が拒絶理由通知であったとしても、その拒絶理由を解消できれば出願から半年程度で特許を取得することが十分に可能です。さらに2回目の拒絶理由通知を受けたとしても出願から1年以内に特許を取得できる場合も珍しくありません。

まとめ

 近年の審査動向から判断すると、通常の審査であれば「最初の審査結果までの期間」に約10カ月、「特許の権利化までの期間」に約15カ月というのが目安となります。また、早期審査を申請して適用されれば「最初の審査結果までの期間」を約3カ月に短縮でき、「特許の権利化までの期間」についても出願から半年~1年程度に短縮することが可能です。これらの審査に要する期間を目安として特許出願を行った発明についての事業化の進展などを勘案しながら、専門家である弁理士にご相談の上、審査請求を行う時期や早期審査を申請するかどうかをご検討ください。

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