特許出願した発明について特許権の成立が認められるのかどうか、特許庁での審査の結果を受け取ることができる時期はいつ頃ですか?
当社が希望するような時期に審査結果を受け取ることが可能でしょうか?

審査請求を行った後、一般的には、10カ月程度で特許庁から審査の結果を受けとることができますます。

特許庁が受け付けている特許出願の数

 特許庁が公表している「特許行政年次報告書2019年版」によれば、近年、日本国特許庁が受け付けている特許出願の数は毎年31万件~32万件です。

特許庁が受け付けている審査請求の数

 特許出願した発明について特許の付与を認めることができるかどうか、特許庁が検討・判断する審査は、特許出願手続と別個に審査請求が 行われた後に開始されます。

 近年、日本国特許庁が受け付けている審査請求の数は毎年24万件 程度です(特許行政年次報告書2019年版)。

 審査請求は特許出願と同時に行うこともできますが、一日でも先を争って行った特許出願で特許請求している発明を改良したより良い発明を後に特許出願した等々の事情が生じることがある等々を考慮して、出願日から3年以内に審査請求することが許されています。

 出願日から3年経過しても審査請求が行われない場合、先願の地位(特許法第39条)を確保する特許出願が行われたという事実、出願後1年6月経過した時点で出願内容が特許出願公開公報として特許庁ホームページ(J-Plat Pat)から世界中に公表され、その後の特許出願で特許請求される発明に対する先行技術文献の地位を確保したという事実は残りますが、特許出願は消滅します。その後に復活させて審査を受けるようにすることはできません。特許庁が公表しているデータによれば、特許出願の中の75%程度が審査請求され、25%程度は審査請求することなしに消滅しているものと思われます。

審査の結果を受けとれる時期

 審査請求を行っても次の日から直ちに審査が開始されるわけではありません。特許庁審査官の手元にあるものから順に審査が進められていますので審査請求後、審査の順番が来るのを待つことになります。

 特許庁が公表しているデータによれば、審査請求後、特許庁から審査の結果(First Official Action=FA)を受けとるまでの審査順番待ち期間は平均で9.3カ月です(特許行政年次報告書2019年版)。技術分野により審査速度に相違がありますので、どの技術分野でも、この程度の期間で審査結果を受けとれるとは限りませんが、いちようの目安としては、審査請求後10カ月程度で特許庁の審査結果を受けとることができます。

 一回目の審査結果が「特許を認めることができない」という拒絶理由通知である場合には、60日以内に意見書、補正書を提出して反論し、審査官に再考を求めることができます。この手続により拒絶理由が解消すれば「特許を認める」という「特許査定」が下されることになります。

 一回目の審査結果が拒絶理由通知で、意見書、補正書提出で拒絶理由解消して特許成立するならば、 速ければ、審査請求から1年~1年半程度で特許成立します。

 特許庁が公表しているデータによれば(特許行政年次報告書2019年版)、審査請求したものの中の70~80%に特許成立しているようです。

 特許出願の中の75%程度が審査請求され、その中の70~80%に特許成立していますので、特許出願の中の50~60%に特許成立しているものと思われます。

 ただし、技術分野によって特許出願の何割程度に特許成立するかは大きく相違していると思われます。また、特許権の効力が及ぶ範囲を非常に狭く補正することで拒絶理由を解消できたということもよくあります。

早期審査

 特許庁は、一定の要件の下、出願人からの申請を受けて審査を通常に比べて早く行う早期審査制度を採用しています。早期審査を申請した出願の平均審査順番待ち期間は、早期審査の申請から平均3か月以下となっており(2017年実績)、通常の出願と比べて大幅に短縮されています。

 中小企業基本法等に定める「中小企業」である場合には早期審査を受けることができ、例えば、製造業の特許出願人が、従業員数300人以下あるいは、資本金の額3億円以下のどちらかの条件を満たしていれば、「中小企業の出願である」として早期審査を受けることができます。

 特許出願後ただちに審査を受けて早期に特許成立させたい場合、特許出願と同時に審査請求し「早期審査の事情説明書」も提出すれば、出願後3カ月程度で審査結果を受け取り、1年以内に特許権成立させて、出願公開公報が発行されるより前に特許公報が発行されることがあります。

むすび

 一般的には審査請求後10カ月程度で、また、早期審査を受ければ3カ月程度で審査結果を受けとることが可能です。特許出願を行った発明についての事業化の進展などを勘案しながら、専門家である弁理士にご相談の上、審査請求を行う時期、早期審査請求を行うかどうか、等々をご検討ください。

<特許出願(特許申請)の基礎知識>

特許申請の基本知識
特許申請の手続きガイド:流れとポイントを解説

 特許出願は、新しいアイデアや技術などの発明を保護するために重要な手続きです。そして、特許出願には複雑な手続きや法律的な要件が存在するため、特許出願の流れについて理解することは重要です。本記事では、日本の特許出願の流れに […]

もっと見る
特許申請の基本知識
特許申請費用の把握と最適化:コストを抑えながら保護を実現する

 特許出願を行う際には、特許出願に伴う費用について理解することが重要です。本記事では、「特許出願の費用」に焦点を当て、特許出願にかかる費用の詳細について解説します。特許申請を検討している方や興味を持っている方にとって、こ […]

もっと見る
特許申請の基本知識
特許申請の代行サービスを利用するメリットと手続きのポイント

 特許申請は、発明や技術的な革新を保護するために非常に重要な手続きです。しかし、特許申請は専門的な知識や綿密な書類作成が必要とされるため、多くの人にとっては困難な作業となる場合があります。そこで、特許申請の代行サービスが […]

もっと見る
特許申請の基本知識
特許取得費用の助成制度とは?出願人の負担軽減と支援策を解説

審査請求料・特許料の軽減制度  特許出願を特許庁に審査してもらうための審査請求料は、通常、基本料138,000円に「請求項の数」×4,000円を加えた金額です。  また、特許権を10年間維持するための特許料は、基本料22 […]

もっと見る
特許申請の基本知識
簡単な工夫では特許取得は難しいのか?成功のための戦略とアプローチ

特許性に関して後知恵での判断は禁物  特許庁の審査官が審査を行う際に注意を払うことの一つに、「後知恵に陥らないようにする」があります。  特許出願にあたって、発明者・特許出願人は、発明の目的(発明が解決しようとする課題) […]

もっと見る
特許申請の基本知識
物の発明と方法の発明の違いとは?特許申請における重要なポイントを解説

発明のカテゴリー 「特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する」(特許法第68条)というのが特許権の独占排他的な効力です。ここでの「特許発明」とは、特許を受けている発明のことをいいます。そして「業として」とは […]

もっと見る

あたなは、このようなことでお悩みではありませんか?

  1. 自社のビジネスモデルをパクられたくない。
  2. どの程度のアイデアなら特許を取れるのだろう…
  3. 構想段階ではあるがビジネスのアイデアを守りたい。
  4. 中小企業が特許を取ることに意味があるか疑問がある。
  5. 特許を取るには費用がかかりそうだが元を取れるの?
  6. 特許申請のために何をすべきか分からない。