弁理士が教える特許実務Q&A「特許庁の審査結果を受け取る時期」

特許などの知的財産は会社の有用な資産、競争力の源泉です。そこで、社内に技術部、特許部、知財部などの専門部を設け、人員を配置して、社内での発明の発掘・創作活動、特許調査、特許出願、特許活用の検討などが、常時、専門的に行われていることが望ましいのですが、そのようにすることは簡単ではありません。

このような体制を構築することが簡単ではない企業の方には知的財産の専門家である弁理士に相談することをお勧めします。

特許実務Q&Aでは、会社内に特許専門ご担当の方がいらっしゃらないような企業の方から弁理士が受けることのある質問をいくつか紹介し、その質問に回答する形式で特許実務を紹介します。

【質 問】
特許出願した発明について特許権の成立が認められるのかどうか、特許庁での審査の結果を受け取ることができる時期はいつ頃ですか?
当社が希望するような時期に審査結果を受け取ることが可能でしょうか?

弁理士 林 崇朗

【回 答】
審査請求を行った後、一般的には、10カ月程度で特許庁から審査の結果を受けとることができますます。

特許庁が受け付けている特許出願の数

特許庁が公表している「特許行政年次報告書2019年版」によれば、近年、日本国特許庁が受け付けている特許出願の数は毎年31万件~32万件です。

特許庁が受け付けている審査請求の数

特許出願した発明について特許の付与を認めることができるかどうか、特許庁が検討・判断する審査は、特許出願手続と別個に審査請求が 行われた後に開始されます。

近年、日本国特許庁が受け付けている審査請求の数は毎年24万件 程度です(特許行政年次報告書2019年版)。

審査請求は特許出願と同時に行うこともできますが、一日でも先を争って行った特許出願で特許請求している発明を改良したより良い発明を
後に特許出願した等々の事情が生じることがある等々を考慮して、出願日から3年以内に審査請求することが許されています。

出願日から3年経過しても審査請求が行われない場合、先願の地位(特許法第39条)を確保する特許出願が行われたという事実、出願後1年6月経過した時点で出願内容が特許出願公開公報として特許庁ホームページ(J-Plat Pat)から世界中に公表され、その後の特許出願で特許請求される発明に対する先行技術文献の地位を確保したという事実は残りますが、特許出願は消滅します。

その後に復活させて審査を受けるようにすることはできません。

特許庁が公表しているデータによれば、特許出願の中の75%程度が審査請求され、25%程度は審査請求することなしに消滅しているものと思われます。

審査の結果を受けとれる時期

審査請求を行っても次の日から直ちに審査が開始されるわけではありません。

特許庁審査官の手元にあるものから順に審査が進められていますので審査請求後、審査の順番が来るのを待つことになります。

特許庁が公表しているデータによれば、審査請求後、特許庁から審査の結果(First Official Action=FA)を受けとるまでの審査順番待ち期間は平均で9.3カ月です(特許行政年次報告書2019年版)。技術分野により審査速度に相違がありますので、どの技術分野でも、この程度の期間で審査結果を受けとれるとは限りませんが、いちようの目安としては、審査請求後10カ月程度で特許庁の審査結果を受けとることができます。

一回目の審査結果が「特許を認めることができない」という拒絶理由通知である場合には、60日以内に意見書、補正書を提出して反論し、審査官に再考を求めることができます。

この手続により拒絶理由が解消すれば「特許を認める」という「特許査定」が下されることになります。

一回目の審査結果が拒絶理由通知で、意見書、補正書提出で拒絶理由解消して特許成立するならば、 速ければ、審査請求から1年~1年半程度で特許成立します。

特許庁が公表しているデータによれば(特許行政年次報告書2019年版)、審査請求したものの中の70~80%に特許成立しているようです。

特許出願の中の75%程度が審査請求され、その中の70~80%に特許成立していますので、特許出願の中の50~60%に特許成立しているものと思われます。

ただし、技術分野によって特許出願の何割程度に特許成立するかは大きく相違していると思われます。また、特許権の効力が及ぶ範囲を非常に狭く補正することで拒絶理由を解消できたということもよくあります。

早期審査

特許庁は、一定の要件の下、出願人からの申請を受けて審査を通常に比べて早く行う早期審査制度を採用しています。

早期審査を申請した出願の平均審査順番待ち期間は、早期審査の申請から平均3か月以下となっており(2017年実績)、通常の出願と比べて大幅に短縮されています。

中小企業基本法等に定める「中小企業」である場合には早期審査を受けることができ、例えば、製造業の特許出願人が、従業員数300人以下あるいは、資本金の額3億円以下のどちらかの条件を満たしていれば、「中小企業の出願である」として早期審査を受けることができます。

特許出願後ただちに審査を受けて早期に特許成立させたい場合、特許出願と同時に審査請求し「早期審査の事情説明書」も提出すれば、出願後3カ月程度で審査結果を受け取り、1年以内に特許権成立させて、出願公開公報が発行されるより前に特許公報が発行されることがあります。

むすび

一般的には審査請求後10カ月程度で、また、早期審査を受ければ3カ月程度で審査結果を受けとることが可能です。特許出願を行った発明についての事業化の進展などを勘案しながら、専門家である弁理士にご相談の上、審査請求を行う時期、早期審査請求を行うかどうか、等々をご検討ください。

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投稿者プロフィール

HAYASHI Takaaki
HAYASHI Takaaki弁理士
特許や商標などの知的財産の専門家。特に半導体・自動車・遊技機の技術分野において実務経験が豊富。諸外国の知財実務にも精通しており、特にインドネシアに関しては知財以外のビジネス情報にも詳しい。