発明の公表時期を早めることはできますか?

  当社が販売開始した製品について特許出願を行っているという事実を、特許庁から付与されている特許出願番号で表示するだけでなく、特許出願している発明内容を紹介することで世の中に示したいのですが、特許出願日から18ヶ月が経過するまで特許出願の内容は特許庁から公表されないそうです。

 特許庁から公表される時期を早めることはできませんか?

弁理士
林 崇朗

 特許出願が行われた事実及びその内容は、特許出願後18ヶ月が経過して特許出願公開が行われるまで秘密にされます。

 これに対して、特許出願が行われている事実や、特許出願の内容をいち早く特許庁から公表してもらいたい、となることが時にはあります。

 これを可能にするのが「申請による早期公開制度」(特許法第64条の2)です。

特許出願の早期公開が求められる事情

 特許出願の内容は、特許出願人、発明者に関する情報と共に、特許出願後18ヶ月が経過した時点で、特許庁から公表されます特許法第64条)。

 この公表は、紙に印刷された特許出願公開公報が特許庁から発行されることで行われると共に、特許庁のウェブサイトJ-Plat Patに電子情報で掲載されて行われます。

 誰にも先駆けて特許出願を行った発明内容が、特許出願公開が行われるまでは秘密にされるわけですから、特許出願人にとってはこの期間が、法定通りに、特許出願後18ヶ月であることが望ましいことであると思われます。

 しかし、特許出願公開が行われますと、特許出願に係る発明内容を実施していると思われる競合他社に対して、補償金請求権行使のための警告書を送ることが可能になります(特許法第65条)。

 例えば、次のような文面の警告書を送付することが可能になります。

 「御社は近頃〇〇の製造・販売を開始されましたが、これは当社が既に特許出願を行い、その出願内容が特許庁から特許出願公開公報(特開〇〇〇〇-〇〇〇〇号 別便の書留郵便で特許出願公開公報をお届けします)で公表されている発明内容を実施する行為に相当するものであると認められます。当社の特許出願については特許庁での審査が完了していませんが、特許庁での審査で特許成立が認められ、御社による〇〇の製造・販売が特許権侵害行為に相当することになる場合には、特許権成立後の御社の行為に対して差止請求(特許法第100条)等の権利を行使するとともに、この警告書を御社にお届けした日から特許権成立までの御社による〇〇の製造・販売行為に対して実施料相当額の補償金(特許法第65条)を請求させていただくことがありますので、お知らせしておきます。」

 自社が特許出願を行った後、他社が開始した行為が、将来、自社特許出願に成立する特許権に抵触することになるのではないか、と思われるような場合、既に特許出願公開が行われているならば、上述したような内容の警告書を送付することが可能です。

 しかし、特許出願公開が行われていない状態では補償金請求権を成立させるための警告書を送付できません。

 このような事情を考慮して認められるようになったのが特許出願人の請求による特許出願の早期公開です(特許法第64条の2)。これによって、特許出願日から18ヶ月が経過する前であっても特許出願の内容を特許庁から出願公開してもらうことが可能です。

 早期の出願公開を行ってもらうための「出願公開の請求」(特許法第64条の2)について注意すべき事項としては次のようなことがあります。

出願公開請求できる者は特許出願人のみ

 早期の出願公開は特許出願人の意思により行われるもので特許出願人のみが早期の出願公開を請求できます。

 特許出願の内容は、本来であれば、特許出願日から18ヶ月経過するまで特許庁から出願公開されないところ、早期公開では18ヶ月が経過する前に特許出願の内容が社会に公表されることになります。

 「特許出願した新規な発明の内容は特許出願日から18ヶ月が経過するまで秘密に保たれていて、特許庁から公表されない」と考えている者にとって、18ヶ月が経過する前に公表されるのは不利益なことになり得ます。

 このため、複数人が共同で特許出願を行っている場合には、共同出願人全員で出願公開の請求を行う必要があるとされています(特許法第14条)。

 また、弁理士のような代理人によって出願公開の請求を行う場合には、そのための特別の授権の証明(特許法第9条、特許法施行規則第4条の3)が必要になります。これが満たされていない場合には、特別の授権が証明されるまで出願公開されません。

出願公開請求は取り下げできない

 出願公開が特許出願人から請求された後に「請求の取り下げ」を認めることにすると、いったん請求があって特許出願公開公報発行の準備を進めた事務処理作業が無駄になり、更に、当該特許出願の出願日から18ヶ月経過時の本来の出願公開の時期に再度同様の事務処理作業を行う必要が生じて特許庁内における業務の無駄が大きくなります。

 このような事情を考慮して、出願公開をいったん請求した後は、その取り下げを行うことはできないとされています(特許法第64条の2第2項)。

出願公開の請求後に出願放棄されても出願公開される

 出願日から18ヶ月が経過した時点で行われる通常の特許出願公開の場合、既に取下げされている特許出願や、放棄されている特許出願、特許庁での審査によって既に拒絶査定が確定した特許出願については特許出願公開が行われません。

 一方、特許出願人の請求によって特許出願が早期公開される場合には、出願公開請求書の提出後に特許出願が放棄、取り下げされたり、特許出願についての拒絶査定が確定しても、早期公開請求に従って、出願公開が行われます(方式便覧54.51)。

出願公開請求後に特許出願公開公報が発行される時期

 具体的な案件によって異なるとされていますが、

(1)特許出願と同時に出願公開の請求が行われたならばその後5ヶ月程度、

(2)特許庁が特許出願を受け付けて特許庁内での方式審査を終え、国際特許分類の付与がなされている段階で出願公開の請求があったならばその後2ヶ月~3ヶ月程度で

特許出願公開公報が発行されるのが通常の取り扱いであるとされています。

 なお、国際特許分類を付与する作業によって多少前後する場合があるとされています。

早期公開の必要性については十分に検討を行う

 補償金請求権行使の警告書を送付できるようにするという目的で「出願公開の請求」を行うことが上述したように可能ですが、早期に特許出願公開されることが望ましいのか、あるいは、早期審査を受けて、早期に特許成立させ、通常の出願日から18ヶ月経過後の特許出願公開公報発行よりも、特許公報が先に発行されるようにした方がよいのか、それぞれ、特許出願人にとって利害得失があります。

 早期公開が必要であるかどうかは専門家である弁理士によく相談することをお勧めします。

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投稿者プロフィール

HAYASHI Takaaki
HAYASHI Takaaki弁理士
特許や商標などの知的財産の専門家。特に半導体・自動車・遊技機の技術分野において実務経験が豊富。諸外国の知財実務にも精通しており、特にインドネシアに関しては知財以外のビジネス情報にも詳しい。